「趣味は何ですか?」。会話の糸口に聞かれることは多いもの。だが、これといって趣味がないと、この質問はプレッシャーだ。SNSにはリア充趣味に興じる様子がてんこ盛り。趣味界は、なんだかんだと悩ましい。インスタ映えを重視して「趣味偽装」する人、趣味仲間から抜けられずに苦しむ人もいるらしい。AERA 7月31日号ではそんな「趣味圧」の正体を探る。
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「かっこいい趣味を持っている人がうらやましい」
来年に就活を控えた都内私立大3年の女子学生(20)はそう語る。今夏からインターンシップも始まり面接の機会も増えるが、先輩学生からは「就活の時は趣味もしっかりアピールしないと話のタネに困る」と吹き込まれている。
自分の趣味は海外旅行で、暇さえあれば比較サイトで安く回れるプランを探している。趣味として悪くないはずだが「面接のとき弱い」とも感じる。
「『趣味は英語。字幕なしで映画を見るのが好き』という友人がいる。そこまでアピールできるものでもないし、今さらほかにも探せないし」
●就活の印象操作に注意
今は、高校時代に部活で取り組んできた競技ダンスを趣味・特技欄にはめ込むか思案中だ。
「本当は、練習がきつくて嫌でしょうがなかったんですけどね」(女子学生)
アピール力重視の就活では珍しくない話だが、彼女のように趣味偽装を考えている人は、注意も必要だ。札幌大学の酒井春樹教授(社会心理学)は、他人の目を気にする人ほど、自分をよく見せようと印象操作をすると言うが、
「服装や身ぶり、声のトーンを変える、実際に何を言うかなども含めて、『印象操作』は就活などの場面では必要です。ただし、それがバレると逆効果。どういうイメージの自分を人に見せるのか、よく考えて、計画的にかつ、リハーサルしないと難しい」
なぜ私たちは、趣味でそこまでしてしまうのか。そこにあるのは「同調圧力」だ。
パートで働く女性(48)には苦い思い出がある。子どもが幼稚園児だった15年前のこと。園のイベントで参加したバレーボールの親子競技が趣味の会に発展。運動好きな女性も自然とメンバーになった。