練習は市内の体育館を借りて週に1回、朝10時から12時まで。毎回20人ほどが参加した。練習後は今日はここ、次回はあそことランチを食べるのがお決まりコース。ママ友同士で、幼稚園から子どもが帰ってくるまでの時間を過ごすのだ。

●母子の孤立を恐れて

 毎回の費用はランチ代が約1千円プラス会場費。ちりも積もれば……で毎週の支出が家計に響く。やめたかった。近い将来に社会復帰を見据えていた女性には勉強時間に充てたいという気持ちもあった。好きなバレーボールが次第に苦痛になった。

 だが、子どもを保育園から幼稚園へ転園させていたこともあって、「うまく輪に入っていかないと母子で『孤立』してしまう」ことを恐れた。バレーボールを通して周囲と良好な関係を築くことを優先し、言われたことには素直に従った。

「年齢も私が一番下だったので、ランチがイヤだなんてとても言えず、波にのまれるしかありませんでした。私は車を運転しないので、練習はいつも近所の人の車。それも勝手に帰れない大きな理由でした」

 会はやがて大会を目指して真剣に練習したい派と、楽しんでやりたい派に分裂。彼女も何かと理由をつけてフェードアウトすることができたという。

 女性に人気の和文化の趣味には独特の圧が存在する。

●免状取得のカギはお金

「今思えば確かに同調圧力はあった」

 と振り返るのは、会社員女性(46)。品よく振る舞いたい、日本文化を学びたいと、33歳の時に表千家の茶道教室に通い始めた。先生は60代後半、生徒たちは40代半ば~60代、7人くらいのメンバーだった。女性が一番若く、みんなからかわいがられた。当初はすべてが新鮮で楽しく、新年になると「婦人画報」で特集される「初釜」という文字に浮かれ、「高級な世界に足を踏み入れちまったゼ」とほくそ笑んでいた。

 ところが、数年で様相が変わった。「せっかくならお免状をもらったら」と先生やお仲間たちに勧められた。この独特の「お免状」システムに、試験はない。取得のカギはズバリ「お金」。もらった後も、先生へお礼をするのがならわしだ。免状には段階があり、それなりの免状を取るのに表千家では最低でも約20年かかるという。

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ