今年6月、小誌ではアエラネットの会員、40~50代を中心に「親の看取り」に関するアンケートを行った。

「看取り方を含めて誰とどのような相談をしたか」という問いに対して、親本人と話し合ったという人は39人中わずか4人。

「漠然と想像しているけれど、親やきょうだいと話したことはない」(自営業・女性・48)
「弟と『一度話をしようね』と言い合っているだけでまだ具体的には何も」(会社員・女性・58)
「父を看取った時、母と相談したかったが、母が現実を受け止められない感じでした。(父は)がんでしたが、そんなに悪いとは思っていなかったので、悩むこともあまりないうちに逝ってしまいました」(医療事務・女性・56)

 迫り来る死に向き合えないまま、問題を先送りしている様子が浮き彫りになった。

「『看取り』について話し合う間もなく父が逝ってしまった」

 こうため息をつくのは、「ブレイン横浜たなべ社労士事務所」(横浜市)代表の田邊雅子さん(59)。今年2月、関西の実家で暮らす父(享年89)が風呂場で倒れてそのまま帰らぬ人となった。2年ほど前から母(86)に認知症の症状が出始めてからは、父が母の世話をして、田邊さんは月に1度帰省する、“遠距離介護”を続けていた。

「父の最期を看るのが母のほうだと思い込んでいたので、母が先に介護が必要になるとは思いもよらなかったことでした。父の葬儀を行うため近所の斎場を利用しましたが、貯金通帳がどこにあるのかわからないので、私と弟ができるだけ立て替え、支払いは少し待ってもらいました」(田邊さん)

 過去に親戚も利用していた斎場を使ったので融通が利いた。また、祖父の月命日に僧侶を呼んでいたので、宗派は特定できたが、会葬礼状に印刷する家紋がわからなかった。

「母は夫に先立たれたショックなのか、ぼんやりしていました。家紋などわからないことは親戚が教えてくれてとても助かりました」(同)

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