2030年。あなたの子どもは何歳だろうか。ちょうどこの頃、社会の中核を担うのは今の中高生だ。AI(人工知能)の進化で仕事も働き方も急速に変わり始めた。変化の加速度を考えると、学校選びの基準もこれまでと大きく違ってくる。もう「教育改革」など待っていては、わが子の成長に間に合わない。AERA 2017年6月5日号では、「AI時代に強い中高一貫・高校選び」を大特集。アエラが注目する中高一貫校・高校の中から、郁文館グローバル高校を紹介する。
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英語の授業ではなく、プレゼンの授業を英語で行っている。そんな印象を抱かせたのは、郁文館グローバル高校の英語授業。高1の3学期から全員約1年間の留学を経験し、3年になるとほとんどの生徒が英語を自在に話す。取材日は、TED(専門家によるプレゼン動画を無料でネット上に公開している米国のNPO)の動画を見て、自分が興味を持った講演内容を要約し紹介していた。ある女子生徒は黒人の講演者が差別を受けたエピソードを、留学先のカナダでの自らの経験と結びつけ、「肌の色で差別される社会であってはならない」と、意見も述べていた。
実は同校は前身を含めると約130年の歴史がある。同じ敷地にある郁文館中学・高校は『吾輩は猫である』を執筆当時の夏目漱石邸の裏にあり、小説に登場する「落雲館中学」のモデル。同校は、運営主体が代わり、06年に郁文館国際高校から改称し生まれ変わった“新鋭校”だ。
本誌は今回、生徒全員が厳しい環境に身を投じ、英語力やグローバル感覚を身につける留学制度がある同校の取り組みに注目した。行き先はカナダかニュージーランド(NZ)で、現地で取得した単位は学校長が承認すれば高校単位として認定され、帰国後は3年に進級できる。
●留学先では「1人1校」
1人1校が原則。教員は現地で選んだ学校を、生徒120人の性格や得意分野などの特性に合わせて振り分ける。会話の機会を増やすためホームステイが基本。スマホなど私有通信端末の持参は禁じ、見つかれば退学処分という徹底ぶりだ。狙いについて土屋俊之教頭はこう話す。