トクホでは認められなかった成分や「目の調子を整える」「睡眠の質の向上」といった表現も認められている。「●●には高めの血圧を下げる機能があることが報告されています」と広告にうたっている機能性表示食品もあるが、「血圧を下げる」という表現はトクホでは認められていない。「驚きの血圧低下作用」をうたったトクホ商品は16年に消費者庁から「誇大広告」と勧告を受けた。より厳しい基準を経たトクホで許されない表現が機能性表示食品で許されていることを消費者はよく理解する必要があるだろう。今年4月には、「目のピント調節」をうたう機能性表示食品が原因と思われる薬物性肝炎が起きたという報告もされている。
●トクホは免罪符でない
では、トクホは信頼性があるのだろうか。もちろん機能性表示食品よりは「審査」を経ているだけまともとも言えるし、基本的には表現も規制されている。だが、その効能についてはやはり過剰に伝わっている部分もありそうだ。
例えば、近年話題のトクホ認定の炭酸飲料。食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにするとうたわれている。その根拠のデータを見ると、実験に参加している「健常男女」の空腹時の血中中性脂肪は120~200mg/dlで、平均値は150を少し超えている。実はこの数字、「高中性脂肪血症」と診断されるレベル。また実験の際に食べる食事の脂質46.1gは、1日に必要とされる脂質摂取量の8割近い「高脂肪食」だった。
「そこまで中性脂肪値が高くなく、1回に取る脂質の量も普通の人に、どの程度効果があるのかは疑問が残ります」(高橋氏)
同じくトクホ成分である茶カテキンには「代謝を高める。脂肪を減らす」効能があるとうたわれている。根拠となる研究を見ると、毎日1本12週間飲み続けた結果、体重が70キロから1.7キロ減ったとある。
「1日に急ぎ足の運動を20分、お米を60グラム減らせば、12週間で同じ体重を減らせます。運動をすれば体力向上効果もあるわけです」(同)
血糖値上昇を抑制するとうたうトクホも多いが、そもそも数ミリグラム程度の抑制がどの程度その人の健康に寄与するかは未知数だと高橋氏は言う。
「数ミリグラムの血糖値上昇抑制は、食べ合わせの工夫などで可能です。トクホさえ摂取すればあとは何をしてもいいという免罪符には使ってはいけません」
(編集部・福井洋平)
※AERA 2017年4月24日号