3足のわらじをはくバイタリティーは、多様化する卒業生の中でもまさにニュータイプだ。

 フリージャーナリストとして活躍する亀松太郎さん(47)は、インターネットとメディアのつながる場所にいち早く乗り込んだ一人だ。J-CASTニュース、ニコニコニュース、弁護士ドットコムニュースなど亀松さんが立ち上げ期にかかわったメディアは、その後いずれも大きく成長した。

 東大法学部には、2浪を経ての入学。在学中はろくに勉強せず、競馬サークルで同人誌などを作っていた。取材の経験がおもしろく、卒業後は朝日新聞社に入社。組織で働くのが合わず、3年後に退社して、国内をブラブラしたり、ネットベンチャーを手伝ったり。若干の迷走期間を経て、司法試験に取り組む一大決心をする。30代前半の5年間、本気で取り組んだ末の、不合格。この挫折体験が今の自分をつくったと亀松さんは言う。

「それまで、東大法学部という、プライドみたいなものも自分にくっついていた。俺はやればできるはずだ、と思っていました。それが完全に否定されて、ゼロになった」

 勉強が得意だと思っていたが、そんなことはなく、計画を立ててその通りにコツコツ進めることも苦手だと初めて気づいた。

 限界を知ったからこそ、その後のキャリアでは自分の特性を生かせる場所を選ぶことができた。

 先のことが何もわからない、計画が立てられないようなベンチャーの現場で、その場その場で考えながらやっていくことは、自分の得意とすることだった。

「逆境に対して意外と平気というか、トライアンドエラーを繰り返すことが好きなんです。失敗もおもしろいと思える」

●ベンチャーで課題解決

「公のために」という東大法学部らしさは持ちながら、それを実現する場所にベンチャーというニュータイプを選ぶ学生もいる。

 親から「どこそれ? 上場企業のほうがいいんじゃないか」と言われながらも、ITベンチャーのSpeeeに、この4月入社予定なのは、村尾昌大さん(22)。

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