


日本の学歴社会の頂点に君臨してきた「東大法学部」。政財官に人脈を伸ばし、国を支えてきたえたエリートたちの母体だ。良くも悪くもスタイルを変えてこなかった「象牙の塔」にも、時代の激変の波は押し寄せる。偏差値序列社会は終わるのか。かつて「砂漠」と称された東大法学部はいま、脱皮の時を迎えている。AERA 2017年3月27日号では、東大法学部を大特集。
東大法学部=そつなくこなす優等生、ではない。あえて冒険を選ぶ人たちがいる。独自の視点と信念で、それぞれの分野を切り拓く「荒野のエリート」たちだ。
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入場曲が鳴り響くプロレスのリングに「弁護人入廷!」のアナウンス。スーツ姿でリングインする片手には、六法全書。
プロレスラーの竜剛馬(りゅう・ごうま)さん(35)は現役の弁護士だ。世間が東大法学部という肩書に持つアンチな感覚も、プロレスでは「おいしい」武器でしかない。
「キャラ作りはすごく楽でした。東大法学部、弁護士というだけでいけすかないイメージがあるでしょ。憎まれる下地がある」
試合では青いシャツに黄色い花柄のネクタイ。さらにいけすかなさを強調する。
中学時代からプロレスは大好き。学生プロレスで在学中から活動し司法浪人中にデビュー。以来月3回ほどリングに上がる。
平日はいわゆるマチ弁として働く。中高時代に見た「正義は勝つ」「合い言葉は勇気」などのTVドラマに触発され弁護士を目指した。司法浪人、ロースクールを経て、司法試験合格。
プロレスも弁護士もいちばん難しいのは「自分のエゴの出し方」だと竜さん。
「どちらも大事なのはお客さんの満足です。でも、そのために自分のエゴを全部しまってしまうと、いい結果が出ない。こういうの見たいんでしょ、というところに落とし込むんじゃなく、手を抜かずに全力でいくからこそ満足してもらえると思うんです」
●挫折で気づいた特性
弁護士、プロレスラーのほか、2年前からは慶應義塾大学大学院で臍帯血バンク関連の研究にも携わっている。