東日本大震災、そして福島第一原発の事故から6年。熊本地震からも、まもなく1年がたとうとしている。いずれの地でも復興は道半ばで、いまも多くの人々が不自由な暮らしを強いられている。しかしその現実の一方で、「風化」は確実に進んでいる。4大都市圏のハザードマップと不動産の値動きを重ねあわせると、「人気の街」の災害危険度がはっきりとあぶり出された。帰宅困難者対策には「東高西低」の傾向が見て取れた。AERA3月13日号は、6年後のいまだからわかったことも含め、「震災時代」を生きるために知っておくべきことを特集。
昨年11月に発生した福島県沖地震では、また道路で渋滞が発生した。災害の教訓を生かすには、どうすればいいのか。科学のチカラで災害時のリスクを減らす研究が進む。
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渋滞は、また起きた。
昨年11月22日早朝、福島県沖を震源としたマグニチュード(M)7・4の強い揺れと津波。福島や宮城県の沿岸では、ライトをつけた避難の車の列が切れ目なく続いた。車で内陸部を目指した、福島県いわき市の沿岸部に住む男性(50)は言う。
「徒歩で避難しないといけないとわかっていても、車でないと逃げられないと思った」
東日本大震災時、太平洋沿岸の平野部では避難を急ぐ車列が渋滞し、そこを襲った津波が多くの命を奪った。この教訓を踏まえ、国は防災基本計画に「避難の徒歩原則」を記載した。もちろん車での避難がやむを得ない人もいる。しかし、被災地ですら避難の原則が浸透していない現実は、車社会での避難の難しさを改めて浮き彫りにした。
●避難のため渋滞を許す
交通工学を応用し、津波時に避難する車を最適ルートに誘導する研究を進めるのは、東北大学の奥村誠教授(交通工学)だ。
「渋滞を許しながら、避難する車が津波に遭遇する危険性を小さくするのが目的です」
従来の交通工学は、渋滞を無駄な待ち時間と考え、渋滞が起きないような経路指定や信号制御による誘導を研究してきた。だが、津波からの避難では、山側など安全な場所で渋滞をあえて起こすことで、海沿いなど危険な場所からの退避を早めることができる。最適化において、あえて渋滞を許したのが奥村教授の手法の最大の特徴だ。