服への苦手意識が、ファッションへの関心を奪ってしまう。ストライプインターナショナルの木本由有さん(38)は言う。
「似合わないと思ったら返却すればいい。とにかくたくさんの服と触れ合ってほしい」
●スマホで気軽に選べる
服への関心がうすれてきているという若年層の人たちに少しでも安いお金でファッションを楽しんでもらい、次世代のブランドのファンを獲得したいという思いが、同社が提供するファッションレンタルアプリ「メチャカリ」にはある。ファッションレンタルは、洋服への関心のスタートアップだ。
「メチャカリ」では、等身大のモデルが着用する大量のコーディネート写真を参考に、着たい服を1度に3点選んで借りる。月に5800円の定額で利用期間内は何度とっかえひっかえしてもいい。洋服選びはスマホから数分でできてしまうし、返却は封筒や伝票が同封されていて近くのコンビニに洗わずにそのまま出せばいいだけなので驚くほど簡単だ。平均してひとり月に9着ほど借りるという。
貸し出す服がすべて新品なのも特徴である。返却された服は検品後にユーズドとして自社サイトで販売することで損益が成り立つビジネスモデルだ。
「メチャカリ」は自社でブランドを持つ会社が、レンタルに注力し始めたということで話題になったサービスでもある。
「自動車の場合、ディーラーでメンテナンスをして、古くなれば買い取りをして、販売するサイクルができている。SPA(製造小売り)もレンタルをしたっていいのではないかという発想からスタートしました」(木本さん)
繊研新聞の調査によれば、日本のファッション市場は9兆6千億円で、その中でEC市場は7250億円という。レンタルにチャレンジしているのはまだ10社程度で、100億円くらいの規模しかない。ファストファッションの効果により、ファッション市場規模はゆるく伸びているようだが、高級ブランドとファストファッションへの二極化が進み、その中間にあるブランドが苦戦を強いられているのが現状だ。木本さんは言う。
「日本のアパレルは斜陽産業だと考えている。今後いかにシェアを取れるかが勝負どころです」
現在の会員数は5千人だが、その6割が今までの顧客ではない層の人を獲得できているという。試しにレンタルで着てそのまま購入するという流れが仮に定着すれば、店舗で服を買わなくなる日が来るかもしれない。
●福利厚生としても
スタートアップ企業のレンタルサービスにおいて、どうアクティブユーザーを増やしていくのかが課題でもある。そんな中、異色のコラボが話題を呼んでいる。前出のエアークローゼットは不動産仲介のエイブルと組んで、エイブルで契約をした女性客を対象にレンタルを無料で行うというサービスを展開した。サスティナではシェアハウス内でレンタルできるサービスを提供したり、エディストクローゼットでは衣料レンタルサービスをGMOインターネットグループが社内向けに展開する福利厚生のサービスとして提供している。時間の使い方の変化や、ネットの活用が普及したことをとらえ、アパレルはどう変わり、どう対応するべきなのか。レンタルファッションサービスが未来に与える影響が楽しみだ。(編集部・柳堀栄子)
※AERA 2017年2月27日号