ファブリック「ウニッコ」 図案デザイン:マイヤ・イソラ(撮影/写真部・岸本絢)
「マリメッコ展 デザイン、ファブリック、ライフスタイル」/会期:~2017年2月12日 Bunkamuraザ・ミュージアム、3月4日~6月11日 新潟県立万代島美術館、7月22日~9月3日 秋田市立千秋美術館、9月16日~11月26日 ふくやま美術館(広島県)
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左から、ドレス「キュラティエ」、ファブリック「クウルピイロ」、1959年/ドレス、ファブリック「エラマン・ランカ」/ドレス「ビフラヴァ」1959年、ファブリック「ヘンニカ」1958年/すべて服飾・図案デザインはヴオッコ・ヌルメスニエミ。マリメッコでは、必ずファブリックと服のデザイナー名が明記される(撮影/写真部・岸本絢)

 誰もが目にしたことがある、咲き乱れるピンクのケシの花や大胆なストライプ。洋服、家庭用品からインテリアまで、世界中で愛されるデザインハウスはどのように生まれたのか。日本初の大規模な展覧会を見てみよう。

【フォトギャラリー】マリメッコ展を写真で紹介

 会場に入ってまず目につくのは、大きなピンクの花々。あまりにも有名な、マリメッコの代表的な図柄「ウニッコ」(ケシの花)だ。日本でも有名なこのデザインは、ファブリック(生地)から文房具まで、さまざまな製品に使われている。

 日本人にとってもなじみ深いデザインだが、会場の壁に飾られた作品は、小さくてかわいいグッズの「手頃さ」とは一線を画している。天井から下げられた大きなファブリックは、あふれるばかりの生命力に満ちている。いずれもマリメッコで最も有名なデザイナー、マイヤ・イソラの作品群。「ウニッコ」と同じ花柄のシリーズなど、明るい力強さを感じさせる。
「マリメッコの登場は、敗戦後の厳しい生活をおくるフィンランドの人々を、励まし、勇気づけた」とは今回の展覧会を企画した、フィンランド・デザイン・ミュージアム館長、ユッカ・サヴォライネン氏の言葉だ。

 アルミ・ラティアがマリメッコを創業したのは1951年のこと。関連する印刷会社プリンテックスのプリント・ファブリックの開発と製造、洋服に使うという目的でつくられた。社名は、女性の名前である「マリ」に、ドレスを意味する「メッコ」をつけたものだ。

●「空っぽ」から生まれた

 30年代、ラティアはヘルシンキの中央工芸学校でテキスタイルデザインを学び、戦後は広告代理店に勤めて経験を積んだ。

 デザイナーとしての訓練を受けていたが、ラティア自身がマリメッコのためにデザインした図案は少ない。若い才能を見いだす能力にもたけていたラティアは、自らがデザインするよりも多くの才能をプロデュースすることを選んだのだ。

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