相手が言ったことに同意するときも、「そうですね」だけでは会話がストップしてしまう。同意する理由を付け加えたり、「同じように」とつないで似た事例を挙げたり、「つまり、こういうことですよね」と言い換えたりできれば、会話は続く。

 日本語の場合、文章の前後の関係性は「暗示」されていることが多く、聞き手が頭の中で類推してくれるのが普通だが、英語では、話し手が自ら筋道をはっきりと示さなくてはならない。しかもAからBへ、BからCへとつながっていく「理由」が明確であることが求められる。

 研修中、クレアさんの質問に全員が「えっ?」と固まった瞬間があった。

「強い理由づけとはどういうものですか。なぜ強いといえるのですか。逆に弱い理由づけとはどういうものですか。メモに書き出してみてください」

 誰の手も動かない。

「『ヒラリーには投票するな!彼女はダメだから』『トランプに一票を! 彼はすべてを解決してくれるから』というのはどうです? 強い理由づけですか」

 クレアさんが続けると、5人のペンが動き始めた。強い理由づけは、「データに基づく」「エビデンスがある」「詳しく説明している」。弱い理由づけは「感情的」「個人的」……。

 さらにクレアさんは尋ねた。

「日本で一番寒いのは2月。チョコレートの売り上げが一番多いのは2月。チョコレートが売れるのは寒いから?」

 強い理由になるのは因果関係で、相関関係ではだめだということだ。受講生の一人、法村匡人さん(32)が言う。

「理由がふわーっとしていても、日本人同士なら察してくれる。だから突き詰めて話すということをあまりしていないのだと痛感しました」

●訓練すれば身につく

 クレアさんによれば、英語圏では幼い頃からロジカルスピーキングの訓練をする。母国語でも訓練していない日本人が、いきなり英語でそれをするのは難しい。でも、スキルなのだから訓練すればできるようになる。

「常に、強い理由づけを考えて文章をつなげていきましょう。トランプ大統領就任演説は理由づけがしっかりしていたか、安倍総理はどうかと分析するのも訓練になる。英語でもロジカルに話せて会話が続くようになるし、面白いことに日本語でビジネスをするときにも説得力が増しますよ」

 外資系企業の現場はどうか。日本オラクルを訪ねた。ここには、英語で「惜しい」思いをしている人たちの「駆け込み寺」のような存在がいるという。6年前から同社に常駐しているマーカス・ジョージさんだ。

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