「理Iの1~2年生のころのクラスでは38人中女子は3人。理学部物理学科に進学すると、71人中女子はゼロでした。現在所属する研究室では、女性は教授の秘書1人だけです」

 どの大学でも学部によって女子比率は異なるが、そもそも女子学生が少ない東大では、理学部や工学部といった学部ではまるで男子校のようにほとんど女子がいない状態だ。

 女子の受験生を増やすために、女子高校生向けのイベントを開くなどしてきたが、なかなか増えないのが現実だという。
「なぜ増えないのか」を知るために、東大に在籍する女子学生の特徴を見てみよう。

 東大が毎年実施している学生生活実態調査(14年)によると、自宅通学者は全体では55.9%だが、女子学生に限ると60.9%。親の年収を見ると、全体では年収750万円以上の世帯が70.1%で、女子学生に限ると72.2%。さらに年収が1550万円以上の世帯は全体で13.6%、女子学生に限ると14.5%だった。

●たとえ学力があっても

 厚生労働省によると、14年の日本人の平均世帯所得は541万9千円だから、東大生の家庭は比較的裕福で、女子学生ではその傾向がより強いと言っていいだろう。

 典型的なのは、都内の私立中高一貫進学校から東大へというケースだ。

 東大理科II類を卒業し、現在は東大大学院に通う女子学生(26)もそう。中学3年生のときに始めた通信教育をきっかけに、東大を目指した。
「周りの友だちも東大志望が多かった。東大は自然な選択肢でした。親も高校の先生も、好きなところに進学しなさいと言ってくれて、ものは試しと勉強を続けたら、受かっちゃったという感じです」

 経済的に豊かで自宅通学が可能。さらに、周囲の理解や協力もある──。これが、東大という選択をする多くの女子学生の共通項だ。

 逆に言えば、地方在住で経済的に厳しい状況に置かれ、周囲の理解や協力も得られない女子学生が東大への進学を目指すことは、たとえ、東大に合格できるだけの学力があったとしても、かなりハードルが高い。

●通学できる範囲で進学

 札幌市で受験生を指導する、駿台予備学校札幌校校舎長の藤井真哉さんはこう話す。

「うちですごく成績がいい女子には、地元の北海道大学志望者が多いんです。十分に東大を目指せるのに、なぜ北大?と聞くと、『親が道外に出してくれない』と言う人もいます」

 以前は東京で予備校生を指導していた。男子であれ女子であれ、志望校選びの基準は成績だったと藤井さんは言う。

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