就職希望者を一年じゅう選考・採用する「通年採用」が、就活の現場に広がりを見せている。10月にはヤフーも参入。新卒者の「一括採用」は消えていくのか?
ヤフーが10月3日に発表した「ポテンシャル採用」は、30歳以下で、入社時の年齢が18歳以上であれば新卒・既卒などにかかわらず誰でも通年で応募ができる。応募から2年以内に入社する条件で、営業職、技術職など全職種が対象だ。
●背景に学生の多様化
「一回社会に出てから大学に入り直すとか、在学中に起業するといったように学生も多様化している。応募者の個別性に向き合おうとすると、通年採用が自然な流れだったんです」
ヤフーの人財開発本部長の斎藤由希子さんはこう語る。最近は特に大学院生の採用が増えているが、研究に集中する院生は就活時期を逃しがちで、制度変更には、こうした人材の“採り漏らし”を防ぐ狙いもある。
通年採用は就活市場で一つのトレンドになりつつある。ここ数年でもファーストリテイリング、ソフトバンクなども通年採用に切り替えている。
年度ごとに一括して求人、在学中に内定を出して卒業直後の4月に入社させるというこれまでの「新卒一括採用」は、日本独特のものだ。企業側には短期間に効率的に採用でき、年次ごとに社員を“輪切り”にすることで人事管理がしやすいメリットがある。だが、「就活に忙殺されて勉強できない」「留学や海外ボランティアをすると就活時期を逃す」など、学生側のデメリットも指摘されてきた。
ここへきて、新卒一括採用に異議を唱える動きはより活発だ。今年3月には経済同友会が通年採用への転換を唱え、8月に就任した世耕弘成経済産業相は、一括採用の雇用習慣について見直しを検討すべきだという趣旨の発言を繰り返している。
「就職というのは、社会に出る時期を決められてベルトコンベヤーに乗ってするものではないと思うんです。しっかり勉強し、考えた上で、ベストのタイミングで応募してほしいというのが制度を変えた根本にある思いです」(ヤフー・斎藤さん)