「どうして子どもをつくらないの」「子どもなんてほしくないんでしょ」
都内の会社員の女性(42)は、10年前に結婚してから、同僚たちから何度そう言われたかわからない。女性は子どもができなかったが、夫と2人で幸せに暮らせればいいと思っている。しかし、周囲から子どものことを聞かれるたびに嫌悪感が走った。
「女性は結婚したら子どもを産み、子どもを産むために結婚するという価値観にとらわれている人って、本当に多いです」
新しい家族を阻む要因の一つが、根強い伝統意識だ。
グラフを見てほしい。1月に電通ダイバーシティ・ラボ(DDL)が全国の20~60代男女計500人を対象に行った、家族観などに関する「ダイバーシティ家族調査2016」の結果の一部だ。そこから、社会に根付いた「価値観」が見えてきた。
「『家族』とは血縁/婚姻関係によって成立するものだと思う」の質問に「あてはまる」「ややあてはまる」と答えたのは男性78%、女性69.2%だった。年代別では、20代が66%だったのに対し60代は81%と、年代が高くなるほど、固定観念にとらわれていることがうかがえる。
子どもに関する家族観では「家族とは、子どもを一人前に育て次世代につなぐ、次世代を育むユニットだと思う」との質問に男性の66.8%、女性の66.4%が肯定的な回答をした。年代別にみると、20代の75%が肯定的な回答をし、60代の78%に次いで多かった。「家族とは子どもを育むもの」という意識は若い世代にも多い。
この点について、DDL主任研究員の古平(こだいら)陽子さんはこう見る。
「20代はまだ結婚をしていない人が多く、経験を伴わない思い込みや憧れが強くなる傾向があるため、家族とはこうあるべきだという価値観が強いのではないか」