読書好きだからこそ陥りがちなのが、一度ハマったテーマや自分の好きなジャンルの本ばかり読んでしまうこと。それでは本来未知との遭遇であるはずの読書体験が、単なるルーティンになってしまう。
いかに自分の枠の外に連れ出してくれる本と出会えるか。「読書のセレンディピティ」を実現すべく、さまざまな読書術を探索してみた。
読書術の古典といわれるm.J.アドラーとC.V.ドーレンの『本を読む本』で紹介されて知られるようになった「シントピカル読書法」。同一テーマを扱う複数の本を併読することによって、どこがポイントなのか、自分は何に興味があって何がわかっていないかを理解するという読書術だ。
今年出た読書術本の中で恐らく最も売れているのが『読んだら忘れない読書術』(樺沢紫苑)。この本の「15分刻み読書術」は長く読むのではなく、スキマ時間に15分だけ読み、それを毎日繰り返すか、その15分を一日の中に数回持つやり方。まとめて読書するよりスキマ時間に読書したほうが記憶において有利だと説く。
知の巨人、立花隆さんの「パラグラフ速読術」も興味深い。一つのパラグラフの頭に大事なことが書いてあることが多いので、パラグラフ別に先頭の文章だけを拾って読む。そうやって1冊読むと、300ページの本でも5~15分で読め、ある程度内容も理解できる。
ニュースキュレーションサイト、NewsPicksの中の書評コーナー、Book Picksを担当する野村高文さん(28)は、仕事柄大量の本を読む。読書と時間の関係を常に模索している。野村さんに、いくつかの「読書術」を試してもらった。
「15分刻み読書術は、スキマ時間で読めるエッセーなどがいいですね。通勤電車などにピッタリ。自分は行き帰りの通勤とお風呂の一日最低3回、ランチの待ち時間も読みました」
この読書術を2週間試して読んだ本が、『職業としての小説家』(村上春樹)、『透明の棋士』(北野新太)、『人生最後のご馳走』(青山ゆみこ)、『孫正義の焦燥』(大西孝弘)の4冊。
「ビジネスパーソンには有効な人が多いと思う。ただ個人的に15分はやや短く、20分くらいあるといいと思いました」
野村さんはその他、「パラグラフ速読術」で3冊を読破。齋藤孝さんの3色ボールペン読書術も10年ほど実践している。
「大学生の頃に線を引いた箇所を見ると、ぜんぜん重要じゃない箇所だったり(笑)。自分の変化があとでわかっておもしろいです」
※AERA 2015年12月28日―2016年1月4日合併号より抜粋