
子どもにソーシャルスキルを教える塾が人気だ。発達に困難を抱えた児童対象だが、一般児童も殺到している。背景には過酷化するスクールカーストなど、学校現場の問題がある。
学習塾Leafでは、相手が言われてうれしい言葉づかい「ふわふわ言葉」や、コミュニケーション術を教える「女子会コース」が人気だ。Leafは現在、首都圏に54校を展開し、生徒数も急増。2年前に比べて3倍強の約7千人にのぼる。中には待機者が出る教室もあるほどだ。人気の理由は、担当者いわく“世の中のあらゆる空気を教える”という多様な講座展開にある。
中高生を対象にした先輩後輩の上下関係を学ぶコースでは、興味がないからといって先輩の話を聞かないのはNGだと教材に明記。小学校入学準備として給食当番の練習をするコースでは、好きな子でもひいきして盛るのはダメだと、給食着を着て配膳をロールプレイングしながら教えていく。
このようなソーシャルスキルトレーニングは、発達障がいの児童の療育で多く用いられてきた。対人関係がトラウマとなって症状が悪化しないよう、成功体験を積み重ねることで、改善効果も認められている。
Leafも元々は発達に困難を抱えた児童を対象に始めたが、生徒の60%は普通学級に通っており、健常者も多いことが分かった。背景には、希薄化する子どもたちの人間関係があると指摘するのは、花まる学習会代表・高濱正伸さんだ。
「昔は地域や自然の中で、年齢の異なる多様な人と遊び、ぶつかったり傷ついたりしながら人間関係を学べたし、本来そうすべきです。ただ、今はそんな環境自体がなくなって、固定した仲の良い友だちとだけ遊んでいればいいや、というコミュニケーション能力の低い子どもが増えたように感じます」
KYやスクールカーストという言葉が定着して久しい。そんな学校生活の息苦しさを、保護者もまた敏感に感じ取っている。
女子会コースは、友人関係に苦い思い出を持つ母親たちの声から生まれた。娘を参加させたシングルマザーの女性(37)も、自身と同じトラウマを娘には味わってほしくないという。
「私は小学生のときいわゆるKYで、女子から仲間外れにされました。娘には空気を読んで、ふわふわ言葉を使えるようになってほしいんです」
※AERA 2015年11月23日号より抜粋