近年、アーティストのライブに子連れでやって来る親子の姿を見かけることが増えた。親にとっては育児の息抜きにもなるライブ、子どもと一緒に楽しめれば理想的だが、そこには賛否両論あるようだ。
発端は、記者が昨年末に行った横浜アリーナでのサザンオールスターズのライブだった。 会場は熱気ムンムン。2階席について、びっくり。隣が幼子を連れた夫婦だった。お母さんは抱っこひもで赤ちゃんを抱え、お父さんは、2歳くらいの男児を膝に乗せている。
一瞬、引いてしまったことを告白しなくては。大音響で過激な言葉も出てくるライブに、なぜこんなに小さな子どもを連れてくるの?と思ったのだ。
案の定、赤ちゃんはぐずりだし、お兄ちゃんは「おしっこ」と言いだし、夫婦はてんてこまい。ラストのバラード曲の途中で席を立っていった。オールスタンディング状態の3時間、隣が気になって全くのれなかった。いや、子どもに罪はないし、家族でライブを楽しみたい気持ちもわかる。しかし、だ。
「子連れでライブは、ありなのか?」
記者が同僚にもらした発言は、周囲でちょっと反響を呼んだ。
「大きな音が子どもの健康に悪影響だから連れていくべきじゃない」(40代女性)
「子どもにはいろんな体験をさせるべきだから、ありでしょ」(30代男性)
「大人の空間に赤ちゃんはマナー違反では?」(50代男性)
思えば音楽界をリードしてきた人気アーティストたちは、もはやすっかりベテランだ。ファンも年を重ね、親になっている人も多い。「子連れライブ」は増えていくだろう。ならば「ありorなし」なんて、小さい話。どうすれば、ママもパパもおひとりさまも、みんながハッピーにライブやコンサートを楽しめるのか──ここが論点だ。
そこで、アエラの「ワーキングマザー1000人委員会」のみなさんに、率直に聞いてみた。
「ライブに子どもを連れていくことをどう思うか」
これもまた、さまざまな声がメールで届いた。目立ったのは、「育児の息抜きに行くのはいいが、子どもに負担にならないか考えることが大事」(30代女性)「子連れ歓迎とうたっている場所以外は、迷惑になるので連れていくべきじゃない」(30代女性)など、「子どもへの負担」や「マナー」を問題視する声だった。
育児を通じてさまざまな価値観を持つ人に触れたという出馬展子さん(42)は、
「自分がいやだと思っても批判するのではなく、互いが楽しめる方法を社会全体で考えられるといいですね」
隣の席が子連れだとわかったとたん、ブルーになった身としては耳が痛い。そのとおりだ。
※AERA 2015年2月23日号より抜粋