浪人回避のため滑り止め大学に入ったものの結局休学、退学。脱ゆとり組と対決する覚悟のうえで、再受験する学生が増えているようだ。
「オレら、浪人するとやばいらしいぜ」
今春、ゆとり世代最後の大学入試に挑んだA君は、高1ぐらいから、クラスメートとそんな話をしていたという。
「高3のとき、部室で後輩が数学を勉強しているのを見たら、見たこともない定理だった。新課程で学び、教科書が自分たちより厚い後輩とは一緒に受験したくない、と思いました」
A君はセンター試験の国語ができなかったため、国公立大の後期は合格できそうな大学に出願した。とにかく浪人したくなかったからだ。前期は不合格だったが、後期で受けた専門分野に特化した大学には合格した。
「両親は浪人を勧めましたが、僕は浪人したくなかったので、その大学に行くことにしました」
ところが、入学前のオリエンテーションに行くと、高2のときに学んだ「数ⅢC」を大学1年のときにやることがわかり、ガッカリした。周りは専門分野の話をするが、A君はその分野にまったく興味がなく、話が合わない。総合大学でさまざまな授業を受け、いろいろな学部の人たちと4年間過ごしたいという思いが強くなった。
「高校の先生に相談し、予備校に通うことに。入学式の4日後に休学届を出したため、父に怒られましたが、駿台の開講日には間に合った。国立の総合大学を目指してもう1年頑張ります」
ゆとり教育の最後の世代が挑んだ今春の入試は、浪人回避で滑り止めをたくさん受けた受験生が多かったため、受験人口が約3%減ったにもかかわらず、志願者が増えた私大も多かった。
「予想以上の安全志向で、今春入学した浪人生は昨年より減りました。ただ、4月から今までに再受験について相談に来た人は、昨年の倍ぐらいいます。例年なら6月にはあまり相談はないのですが……」と語るのは、駿台予備学校お茶の水1号館校舎長の新井智恵(ともえ)さんだ。
Z会で通信教育を担当する窪田雅之さんも同様のことを口にする。
「高校コースへの問い合わせ・相談総件数に占める高卒生または大学生の比率は、前年、前々年と比較して明らかに高まり、4月、5月と経過するにつれ、差が大きくなっています」
後続の脱ゆとり世代との競争を避けるため、滑り止めの大学への不本意な進学に甘んじたものの、入学してみるとやはり不満が募って結局、今の時期に休学または退学し、再受験を決意するようだ。
※AERA 2014年6月23日号より抜粋