ピーチ・アビエーションやジェットスター・ジャパンなど、格安航空会社(LCC)が次々に日本に就航し、空の旅も低価格で楽しむことができるようになった。この「空の変化」によって、大きな人生の転換期を迎えた人たちがいる。客室乗務員(CA)を夢見て、これまでのキャリアをなげうって、この世界に飛び込んだ女性たちだ。
CAたちは入社動機も前職も違うが、いずれも「いま」を楽しんでいる。ピーチ・アビエーションの1期生・斎藤葉子さん(31)は「あれもこれも経験したい」タイプだ。外資系製薬会社のMR(医薬情報担当者)として働いていたある日、たまたま募集をインターネットで知った。
「見た瞬間に惹かれました」
斎藤さんは、興味を持ったら飛び込んでいく。学生時代は、地元・大阪の大学で経済学を学んでいたが、イスラム圏での刑罰に関心を持ち、3年から筑波大学社会学類に編入。法学と社会学を学んだ。
卒業後は、まったく関係のない教育関連会社に就職。入社2年ほどで「営業という仕事に挑戦したくなった」ために製薬会社に転職。会社にもMRという仕事にもことさら不満は感じず、これから…という時期に、ピーチの募集に出合った。ピーチには原則、正社員は存在しない(全職種が有期の契約社員)。CAは1年契約で、更新は2度まで。決して「安定」した職場ではない。
「期限があるからこそ頑張れるんじゃないか、というところがあります。契約は、最長で来年9月まで。その後のことは、具体的には考えていません。同期の寿退社が続いているので、それにあやかりたいな、とも思いますね(笑)」
一方、「お婆ちゃんになるまで働きたい…会社がいいと言ってくれればですけど」と言うのは、エアアジア・ジャパンの坂巻理沙さん(32)。ホテルのレセプション、塾講師、英会話学校講師を経て、昨年、ついに「天職」を得た。
「私はずっと逃げ続けてきたんです。やりたいことがない、という理由をつけて、入試でも就職でも、挑戦しないで楽なほうに逃げてばかりだった」
やりたいことが見つからず、短大卒業後は、親の勧めに従ってカナダに留学した。しかし、神奈川で重機工場を経営していた父親が倒れたため、中退して帰国。家業を手伝ったが、父の死去に伴い工場は閉めた。
仕事を転々とした後、CAの募集を知った。初めて「自分を変えたい」と感じ、その決意を新婚の夫も後押ししてくれた。
※AERA 2013年10月28日号