終了後、再び遺体を布団へと移動させ死に装束を着せる。遺族の要望、故人の遺言などで生前に着ていたお気に入りの洋服や、ウエディングドレスを着せるケースも増えている。 そしてメーク。女性の場合、下地とファンデーション、最後に防腐効果のあるクリームを塗って終了。この時、細部まで色をならしておかなければ化粧は浮き、温かみのある肌の色は甦ってこない。全てが終わると、遺体を棺へと移す納棺の儀が執り行われる。

 1日に対応する湯灌は最大5人。1人あたり1時間半で全てを終えなくてはならない。当然、全てが大往生とは限らない。自殺、事件死、孤独死、交通事故。中には1歳に満たない赤子や、警察の連絡で駆けつけた時には、腐敗が進み、生前の面影すら分からない状態の変死体に遭遇したこともある。今まで、不思議と腐敗臭を感じたことがない。脳がそれを受け付けない感覚なのだという。

「ご遺体って何かを物語るのです。無精ひげで爪が伸び放題。病院に入っていても家族とは疎遠だったんだなって」

 持井が湯灌師の道を選んだのは4年前。当時、54歳だった父が交通事故で他界したことが関係している。それは、突然の出来事だった。長距離運転手だった父が、高速道路で発生した4台の玉突き事故に巻き込まれ死亡。事故現場が遠方だったため、亡骸(なきがら)は飛行機で輸送され里帰りを果たした。大学卒業後、葬祭ディレクターの仕事をしていた持井は、自分の働いていた会社に葬儀を依頼し、自分に父の葬儀の一切を取り仕切らせてほしいと談判、了承をもらった。

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