生前整理アドバイザー認定指導員の徳山弘美さんは、「死」を境に、ものの重みが変わると指摘する。
「あなたが亡くなったら、その時点で家の中にあるものは『遺品』となってしまいます。遺族たちは、扱いに困るのです。だからこそ、生きているうちから、大切なものを見極めておくことです」
持ち主不明の資産が出れば、子ども側に裁判が必要になることもある。負の資産があれば、子どもに引き継がれることもありうるからだ。死後に子どもに迷惑をかけないためにも、ものの整理はもちろんのこと、人生の終わり方(葬儀や墓など)の決定と伝達は、やっておきたい。
徳山さんによれば、生前整理は「もの」のほか、「心」「情報」の三つに区別してするのがいいという。
「心の整理は、エンディングノートを作成することでできます。書いている人はまだまだ少ないです。もしものときに備えて、延命治療や尊厳死などの希望をノートや手紙で大切な人に伝えておくことは大事。情報の整理は、資産など本人にしかわからない事柄を書面に残し、大切な人と共有するなどして可視化しておくことです」
葬儀の希望に関しては、するかしないか、どこでどのようにやるかを具体的に家族に伝えて(ノートに記して)、さらに生前見積もりをとっておくといいという。
「事前にいくらかかるのかがわかるし、どこから誰が捻出するのかも把握できます。当日、葬儀もスムーズに行えます」
葬儀に関しては、前出の井上さんもこう話す。
「例えば、親が先祖代々の墓を守りたいと言ったら、それに従ってほしい。『そんなの守れないよ』なんて言えば、親側の精神も不安定になります。とりあえず親の希望を受け入れて、自分たちが次につなげるときに考えればいい。30も年が違う世代の人に、自分たちの感覚を押し付けるのは良くないものです」
ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん(56)は、自身の準備についてこう話す。
「大事な情報は、『貯金簿』と『パスワード帳』で分けて保管しています。それらとは別に『手続きノート』を作り、そこには請求の仕方などを書いています。それでもわからなくなったときのために、ノートには尋ねる人の連絡先も入れています」