──100メートルは大接戦。平井コーチから「勇気を持って、ゆっくり行け」という助言を受けます。大きなストロークで自分の泳ぎに徹しろ、という意味ですね。
あの一言で、肩がすっと落ちました。体と脳がうまくリンクして、完璧に制御できました。自分のベストレースです。言葉の力って大きい。一つの言葉で泳ぎが変わった。自分で思い描いてイメージトレーニングしても、あの泳ぎはできなかったと思います。
──100メートルで勝った後の言葉が「何も言えねえ」。
ワードでも切り取られる選手になったんだなって思いました。何も言えねえ、ですから(笑)。期待してくれていた人が多くて、ワードを待ってくれていた人がいたわけですから、選手冥利につきますよね。
──ついに20年東京五輪を迎えます。
東京で生まれ育った一人のオリンピアンとして、誰しもが憧れる祭典が自分の地元に来るのは、うれしいですね。ドーピング問題など克服すべき課題はありますが、世界中が注目して、一緒に笑ったり泣いたりできる。スポーツの感動を世界で共有できるのが五輪の魅力だと思います。
──今回は報道する立場になりました。
選手だったからこそわかることを伝えたい。昨年のラグビー・ワールドカップによって「ONE TEAM」という言葉がはやったように、チーム・ジャパンとして世界とどう勝負するか。もっと広くいえば、日本が開催国として海外の人たちをどう受け入れるかという課題もあります。日本全体がチーム一丸となって五輪を迎えられたら、と思います。
インタビューの詳細は2月14日発売の「週刊朝日増刊 東京2020オリンピック読本」で掲載されている。(本誌・堀井正明、秦正理)
*週刊朝日オンライン限定記事