実はこの日は、トレーニングを始めてすぐは少々焦り気味で、不安な表情を見せていた。というのも今夏は雨が多かったので、4回ほどジムを休んだ。そのため調子が上がらないという。
「違和感があるわ。全然挙がらなくなっちゃった。10月26、27日の全日本選手権で、ちゃんとした成績を残したいの。そうでないと、来年の世界選手権に出られないから。来年はチェコでの開催。私が初めて出場したのもチェコ大会で、そのときに仲良くなった友達と会いたいのよ。だから早く体を元に戻さないと」
十数年前にはわずか2キロのダンベルを持つのもやっとだったフツーの主婦は、世界選手権6回目の優勝を貪欲に目指している。
■「大好きな剣道のため、健康で」87歳、病気知らず
「病気知らずなんです。30年以上、風邪をひいたこともありません。よく『剣道をしているから健康なんですね』と言われますけど、逆です。大好きな剣道を楽しむため、健康に気を使ってるんですよ」
そう語るのは、東京都の平山四郎さん(87)。今年6月に行われた「全日本高齢者武道大会(剣道)」の85歳以上の部で、悲願の初優勝を果たした。
平山さんはこれまで同大会で、3位入賞を果たすこと6回。「ブロンズコレクター」が、ついに頂点に立ったわけだ。
「私は六段から七段に上がるのに13年かかりました。そのときといい、今回といい、使い古された言い方ですが、『努力は嘘をつかない』と感じましたね」
毎週2回、四段、五段といった脂の乗った時期の剣士らと稽古に励んでいる。しかしそれ以上に大事なのは、日頃の体力作りだ。
「大会は、リーグ戦2試合、決勝トーナメントが最多で3試合。一日で5試合も戦います。なるべく早く一本勝ちするよう心掛けていますが、どうしても最後は体力勝負になってきます。普段から特に足腰を鍛えて、敏捷(びんしょう)性とスタミナをつけないといけないですね」
毎日30~40分は早足で歩いている。雨の日は代わりに、家の階段の上り下りを繰り返す。