西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「柔らかく」。
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【ポイント】
(1)怒っている人を見るのは気分がよくない
(2)自分が怒るとさらに気分が悪い
(3)怒りではなく、柔らかく静かに
喜怒哀楽というように怒りは基本的な感情のひとつです。ですから、怒るのは人間にとって、自然なことだとも言えます。でも怒っている人を見るのは、気分がよくないですね。
私は映画が大好きで、特にジョン・フォード、ヘンリー・フォンダといった人たちによる映画は欠かさず観ています。ところがジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ主演の「怒りの葡萄」だけは観ていないんです。名作だと言われていますが、「怒り」は観たくないんですね。
年をとることによって、穏やかになる人と怒りっぽくなる人がいるようですが、せっかく年をとるなら、穏やかになる方を選びたいものです。
そういう私は、あまり怒らない方です。外科医だった40代に看護師さんたちに、「ほとけのおびつ」と呼ばれていましたから。
でも、10年ぐらい前に一度、怒ってしまったことがあるんです。外から自分の病院に電話をかけたら、それに出た新入社員の応対が悪くて、怒りがわいてきてしまったのです。
久しぶりに怒ったら、内心忸怩(じくじ)たるものがありました。怒っている人を見るのもよくないけど、自分が怒るとさらに気分が悪いですね。怒りの感情はやはり身体にプラスになりません。
怒らないということで感服したのが、太極拳の恩師、楊名時先生です。先生が亡くなるまで、何度も酒を酌み交わし、膨大な時間をお付き合いさせていただきましたが、一瞬たりとも先生の怒った顔を見たことがありません。怒りだけでなく、不安、恐れ、悲しみ、嫉妬、嫌悪といったネガティブな感情がまったく顔を見せないのです。