「今後、人口減少が進めば、当然、地域医療支援病院をどうするかの議論になる。地域医療支援病院がなくなれば、かかりつけ医が対応できない患者を適切に診ることができなくなる。つまり第一線にいる医者が孤立無援になってしまう。地元への影響は大きい」
小規模の病院では、規模を縮小し、診療所となるケースも出ている。
熊本県八代市にある「八代市立病院」は今年3月に閉院した。病床は66床あり、60年以上も地域医療を支えてきたが、人口減少や、熊本地震の影響により経営状況が悪化。経営を維持するためには外来の患者数は1日50人が必要だったが、30人程度にとどまった。市の担当者は「人口が増えて、患者が多くなるということは到底望めない状況だった」と話す。
結果的に、同じ市内にある熊本総合病院が事業を譲り受け、市立病院があった場所にクリニックを開設し、診療にあたっている。救急外来は受け付けない。
クリニックの近くに住む男性(76)は、「高齢者が多くなっており、歩いて行ける病院がほしいというのがこの周辺に住んでいる人の思い。大きな病気を患ったら、通うのは無理だと思う。市は『採算が合わない』と閉院したが、本当に残念」とため息をついた。
こうした「一般病院」がなくなる懸念がある地域をまとめたのが【表3】だ。赤平市(北海道)、南伊勢町(三重県)など人口の減り方が激しい地域が多く並ぶ。診療所が残ればまだいいほうで、病院自体がなくなる地域も出てきそうだ。
【表3】一般病院
都道府県 市区町村 総人口
2015年/2040年
北海道 赤平市 11,105/4,690
青森県 鰺ケ沢町 10,126/4,795
岩手県 軽米町 9,333/5,177
山形県 最上町 8,902/4,838
埼玉県 越生町 11,716/7,161
小鹿野町 12,117/6,458
千葉県 大多喜町 9,843/5,754
鋸南町 8,022/4,055
東京都 八丈町 7,613/4,377
神奈川県 松田町 11,171/7,364
新潟県 阿賀町 11,680/5,495
石川県 穴水町 8,786/4,382
長野県 信濃町 8,469/4,558
岐阜県 八百津町 11,027/6,432
白川町 8,392/4,132
静岡県 西伊豆町 8,234/3,499
三重県 大台町 9,557/5,642
南伊勢町 12,788/4,904
兵庫県 神河町 11,452/7,313
和歌山県 紀美野町 9,206/4,408
島根県 津和野町 7,653/4,206
広島県 神石高原町 9,217/5,153
徳島県 海陽町 9,283/4,538
愛媛県 久万高原町 8,447/3,820
福岡県 添田町 9,924/5,362
佐賀県 太良町 8,779/4,593
長崎県 東彼杵町 8,298/5,432
熊本県 苓北町 7,739/4,453
鹿児島県 錦江町 7,923/3,818
沖縄県 久米島町 7,755/5,164
人口減少の影響は、介護の分野でも出てきている。高齢者の数が増えていく間は、介護分野に新規参入する事業者は多いが、いずれ高齢者が減る状況になれば、介護事業自体も成り立たなくなる可能性がある。