「水産仲卸売場棟にある30分300円の時間貸し駐車場は、約50台分しかありません。長い車列ができて、駐車場に入るまで1時間待ち、という状態になります。市場の敷地が広くて買い回りにも時間がかかる。駐車料金も割に合わないということで、料亭や小料理屋などのお客さんが激減しました。築地ならば近くに区営駐車場もあったし、コインパーキングもたくさんあった。地下鉄も複数駅が利用できたのですが……」
こうした不便さは、魚の流通ルートさえも変えてしまったようだ。建築エコノミストの森山高至氏がこう指摘する。
「例えば、東北地方から来る水産物のトラックはこれまで築地に寄ってから横浜や川崎の市場に向かっていました。ところが豊洲になってからスルーする配送業者が増えている。すぐに敷地に入れなければ時間のロスだし、魚の売値にも影響しかねないからです」
約5700億円もかけて整備した豊洲市場だが、わずか半年あまりで敬遠する傾向が生じてきたということか。
森山氏は懸念する。
「このまま取扱量の落ち込みに歯止めがかからなければ、市場は破綻するおそれもあります」
(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2019年6月14日号