私たちの身のまわりにはいま危険なことがありすぎる。私たち自身も常に新しい情報を手に入れて身を守らねばならないが、やはり高齢の親のケアも忘れてはならないだろう。どうしても高齢者だけでは見抜けない詐欺はあるもの。「子や孫は両親や祖父母に定期的に連絡をとるのはもちろん、見守りながら、異変がないか気づいてあげることです。そしてもし親御さんが何かしら詐欺に引っかかっていたとしても、絶対に『何やってるの、もう!』などと強く責めないでください。それを一回でもやると、親はもう子どもには相談できなくなってしまう。でもそういうときに詐欺師は親御さんにいよいよ親切にしますよ。そしてますますいいカモにされてしまう場合があるのです」(多田さん)。二次被害、三次被害を防ぐためにも、親に声をかけるならひとことだけ。「危なかったね」と、親の気持ちを傷つけないように声をかけるのだ。

 警視庁犯罪抑止対策本部のツイッターではその日の午前中に犯罪抑止対策本部に報告のあった都内のアポ電(犯行予兆電話)情報を公開している。また警視庁の防犯アプリ「Digi Police(デジポリス)」内の「特殊詐欺まるわかり」の中の「音声コーナー」では実際の詐欺電話の音声を公開しているので、子、孫が親、祖父母に注意を促すときに活用してもいいだろう。

 卑劣な手段によって、今までためてきたお金をかすめとられないように。そして普通の暮らしが壊されないように。

 こちらも徹底的に抗う姿勢が必要なのである。

(ライフジャーナリスト・赤根千鶴子)

週刊朝日  2019年4月19日号より抜粋

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