医療情報に関しては、世間一般に広まっていることが間違っていることもある(写真/getty images)
医療情報に関しては、世間一般に広まっていることが間違っていることもある(写真/getty images)

 皮膚に蚊に刺されたあとのようなブツブツが出てくると、蕁麻疹(じんましん)だと思う患者さんは多いです。しかし、診断するとそうではないケースがあります。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が、蕁麻疹をめぐる三つの誤解について解説します。

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 ウルトラマンが地球上に3分しかいられないように、私は直射日光を10分以上浴び続けることができません。蕁麻疹(じんましん)が出ます。

 物心ついた頃からすでに喘息(ぜんそく)だった私は、結膜炎、鼻炎など、さまざまなアレルギー疾患をわずらいました。そのなかでも珍しい持病が日光蕁麻疹(にっこうじんましん)です。

 私がこの日光蕁麻疹に気がついたのは、高校生のときでした。

 水泳の授業が始まってすぐ、日差しを浴びていた顔がかゆくなりました。そのうち顔だけでなく、全身が赤く腫れ上がりはじめました。あまりのかゆさに気分が悪くなってしまったほどです。

 日光蕁麻疹は、蕁麻疹の中でも0.08%と非常に珍しいアレルギー疾患です(Photodermatol Photoimmunol Photomed, 20 (2004), pp. 101-104)。

 紫外線の中の波長であるUVAや可視光線に反応し、数分以上浴び続けると蕁麻疹が出現します。私の場合は約10分です。面白いことに日光にあたった部分だけ蕁麻疹が出現します。

 さて、皮膚科の外来ではたくさんの患者さんが蕁麻疹で受診されます。そして、蕁麻疹をめぐっていくつかの誤解があります。

「この間、蕁麻疹が出ました」と患者さん。

 私は最初に皮疹(ひしん)の特徴について質問します。

「どんなブツブツが出ましたか?」

 蕁麻疹の場合、膨疹(ぼうしん)と呼ばれるブツブツが出ます。蚊に刺されたあとのような、プクッと膨れて地図状の形を呈するもの。

「そのブツブツはどれくらい続きましたか?」

「先週からずっと続いています」と患者さんが答えれば、次の質問です。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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「何か食べたかなぁ」の誤解