さて、蕁麻疹に話を戻しましょう。蕁麻疹が出現して1カ月以内のものを急性蕁麻疹といい、それ以上続くものを慢性蕁麻疹とよびます。急性蕁麻疹になった患者さんの10~15%程度が慢性に移行するといわれています。

 蕁麻疹の治療ですが、原因がわかっていれば原因の除去になります。ただ、ほとんどの場合は原因不明です。原因が不明でも治療はほぼ同じです。抗ヒスタミン薬の内服です。花粉症で飲む薬と同じものです。

 ここで三つ目の誤解です。

 アレルギーの薬は眠くなったほうがよく効く、わけではありません。

 蕁麻疹や皮膚のかゆみに関していうと、眠気と効果は相関しません。眠い薬ほどよく効くわけではありません。むしろ私たち皮膚科医は眠くなる抗ヒスタミン薬の処方は避けます。

「インペアード・パフォーマンス」という概念があります。鈍脳(どんのう)とよばれるものです。抗ヒスタミン剤を内服した場合、眠気を自覚せずとも判断能力を鈍らせることがあり、それをインペアード・パフォーマンスといいます。第一世代とよばれる抗ヒスタミン薬(ポララミン、ペリアクチン、アタラックス)は、眠気が強く出ることが知られています。

 したがって、多くの抗ヒスタミン薬は内服後、車の運転が禁止されているか注意するように添付文書に書いてあります。また、子供の場合、抗ヒスタミン薬で授業中の集中力が低下するリスクもあります。ちなみに私の日光蕁麻疹は、眠気があまり出ないといわれているアレグラを外出前に内服すると予防可能です。

 さて、今回は蕁麻疹をめぐる三つの誤解を紹介しました。医療情報に関しては、世間一般に広まっていることが間違っていることもあります。また有名なことと頻度が高いことは別です。ご自身の病気に関してはきちんと主治医に確認し、正しい情報を入手するようにしましょう。

◯大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医。がん薬物治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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大塚篤司

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大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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