「90年代は明るく若いパラサイト・シングルで始まりましたが、親が亡くなったら生活できないという中年パラサイト・シングルとなって、平成が終わります」
この危機的状況を示す言葉が、「2040年問題」。40年には親世代の大半が亡くなり、残された高齢の子どもたちが、にっちもさっちもいかなくなる状態がやってくるのだ。
問題は00年ごろから指摘されてきたが、中年パラサイト・シングルは増加傾向のままで、対策は進んでこなかった。
親が死んだときに、60歳を超える未婚の子どもたちはどうなるのか。いまさら正社員として雇ってくれるところはなく、頼れる親族もほかにいない。山田さんは中年パラサイト・シングルの多くが、「下流かつ孤立老人」になると予測する。
「下流老人」とは、生活保護基準に相当するような貧困状態で暮らさざるを得ない人たちだ。孤立老人は、社会や身内とのつながりが切れて誰からも支援してもらえない。
こうなると、「命の最後の砦(とりで)」とされる生活保護に頼るしかない。
厚生労働省が1月9日に発表した調査では、昨年10月時点で生活保護を受けている65歳以上の高齢者世帯(一時的な保護停止は除く)は88万2001世帯。過去最多を更新しており、生活保護世帯全体の54.1%を占める。
いまでも生活保護を受ける高齢者が多いのに、中年パラサイト・シングルが65歳以上になればどうなるのか。山田さんは『底辺への競争 格差放置社会ニッポンの末路』(朝日新書)でこう予言している。
<年金をもらい続けるために親の死を隠す、生きていくために刑務所に入るといった事件がニュースにもならないほど「当たり前」になってくる>
つまり、いまは悲惨なケースとして報じられていることが、ニュースにならない規模で発生する社会になるというのだ。
平成を振り返るとパラサイト・シングルのほかにも、「ニート」や「ロストジェネレーション」といったキーワードが浮かんでくる。いったん正社員になるコースから外れると、安定した仕事には就きにくい。
ここ数年の大学新卒者の就職市場は空前の売り手市場で、かつての「就職氷河期」の大変さは忘れ去られている。当時、100社以上受けても内定がもらえない学生は、珍しくなかった。大手企業は新卒の一括採用をいまでも重視しており、途中から入ることは難しい。社会に出るときに不景気で損をした世代は、その後もずっと不利益を被っている。中年パラサイト・シングルもそうした世代だ。(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日 2019年2月1日号より抜粋