正社員の求人。人手不足でも希望の仕事に就くのは簡単ではない
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山田昌弘・中央大学教授
山田昌弘・中央大学教授
(週刊朝日 2019年2月1日号より)
(週刊朝日 2019年2月1日号より)
平成の「家族」を巡る主なキーワード (週刊朝日 2019年2月1日号より)
平成の「家族」を巡る主なキーワード (週刊朝日 2019年2月1日号より)

「サザエさん」のような3世代同居の大家族も今は昔。一生結婚しない人が増え、孤独死は珍しくなくなった。昭和の「家族」が崩壊した平成を振り返りながら、次の時代はどうなるのか、パラサイト・シングルの名付け親の山田昌弘・中央大学教授(家族社会学)に聞いた。

【グラフで見る】こんなに変わった!中年パラサイト(35~44歳の親同居未婚者)数の推移

 もうすぐ終わろうとしている平成。バブル崩壊で経済が長期間停滞し、地震や豪雨など災害が相次いだ。年金や医療といった社会保障制度への不安も高まり、不透明感が増した時代。そんな中で家族のあり方も大きく変わった。一言で言えば、「多様化が進んだ」のだ。

「一言では語れない時代に入りました。○○世代と語れるのは昭和生まれまでです。昭和の若者はみんな中流で似たような考え方を持ち、モデルとなる家庭像を語れました。平成の30年間で格差が広がり、もはや一言では語れなくなりました。結婚して子どもをつくり家庭を築く人はまだ多数派ですが、そこからこぼれ落ちる人は増えてきています」

 東京学芸大学の助教授だった山田さんが『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)を出したのは1999年。若者の就職が難しく、給料も上がりにくいなか、親と同居してリッチに暮らす20代の未婚者は、まるで親に寄生(パラサイト)しているように見えた。

 それが可能だったのは、親の世代はほとんど正社員で、持ち家があったから。経済的に余裕があり、稼げない息子や結婚前の娘を支援するのに抵抗感はなかった。20代のうちは親に頼っていても、いずれは自立して自分の家庭を築くと期待されていた。

 だが、現実はそうはなっていない。30~40代の中年になっても、結婚しないまま親と同居し続ける人たちがたくさんいる。

 総務省統計研究研修所の西文彦さんは、「35~44歳の親同居未婚者」の推移をまとめた。80年には39万人しかいなかったが、2016年には288万人まで急増している。35~44歳人口に占める割合も、2.2%から16.3%に上昇。6人に1人が該当するまでになっているのだ(データは各年とも9月の数値)。

 山田さんは、こうした親同居で未婚のアラフォーを「中年パラサイト・シングル」と呼んでいる。

「これから20年後、彼らは50~60代になり、寄生する親は80~90代を迎えます。いまは親が年金をもらっているので、子どもの収入が少なくても、とりあえず生活は保てています。親の介護も同居の子に頼ることができます。ただ、親が亡くなる日は必ず来ます」

 いつまでも親の年金や貯金、持ち家に頼り続けることはできない。「中年パラサイト・シングル」には正社員もいるが、2~3割は不安定な非正規雇用で働く。約1割は失業者だ。親の死後を見据えて、自分で十分な蓄えをしている人は少数派だ。親の貯金を使い果たせば、生活保護に頼るケースも考えられる。

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