■スポンサーによってボンドの嗜好品も自然と変わる? 


 
 ちなみに原作ではジェームズ・ボンドの好みのシャンパンは「テタンジェ(Taittinger)」とされており、映画第2作、「ロシアより愛をこめて」にも出てくる。しかし、後にボランジェがボンド・ムービーのオフィシャルなシャンパンとなったため、その後の映画ではボンドはボランジェしか注文しなくなった。

 同様のことは、ほかにもある。原作ではボンドが乗る「ボンドカー」がベントレーなのに映画では(ほとんどが)アストンマーティンだったり、当初ロレックスを腕に巻いていたボンドだったが、スポンサーがオメガになってからオメガしか着けなくなったり。いろいろマニアとしては面白い。

 時に、英国の医学雑誌「BMJ(British Medical Journal)」は毎年クリスマスになると冗談みたいなテーマを本気で扱う医学論文特集を行う。そこでよく引き合いに出されるのがジェームズ・ボンドだ。英国人は彼のことが本当に好きなんだろうなあと思う。

 例えば、こんな論文がある。

 ぼくは「シャトー・ムートン・ロートシルト」のエピソードの有無を確認するために『ダイヤモンドは永遠に』をパラパラめくっただけで疲れてしまった。が、なんとある論文では、小説に登場したボンドの飲酒シーンを全部ひとつひとつチェックしたのだ。

 これによるとボンドは酒浸りで推奨量の4倍もアルコールを飲んでおり、ボンドがお気に入りのマティーニを注文するときの決まり文句、「ステアではなく、シェークで(shaken, not stirred)」はボンドが酒に溺れて手が震えていたためではないか、とこれまたウィットに富んだ結論で結んでいる(Johnson G, Guha IN, Davies P. Were James Bond’s drinks shaken because of alcohol induced tremor? BMJ. 2013 Dec 12;347:f7255)。

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