うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格。ベストセラー『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』の著者・杉山奈津子さんが、今や3歳児母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。
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福沢諭吉が『学問のすゝめ』で書いた言葉に、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」というものがあります。
非常に有名できれいな言葉ですが、逆に「きれいごとだ」と言われることもあります。実は彼の伝えたいこともそのとおりで、本当はこの言葉の後には「~と云へり」、つまり「~と言います」と書かれていて、その後に、「されども(しかし)」という逆説が続いていることはあまり知られていない事実。彼が本当に言いたかった、「……と言われているが、世間を見ると、賢い人も愚かな人も、金持ちも貧しい人も、身分が高い人も低い人もいて、それは雲泥の差だが、どうしてだろうか」という言葉は、省略されがちです。
彼の主張は、「人は生まれたときは平等である。学問に努め物事をよく知ることで、貧富の差が生じてくる」と続いていきます。だからこそ、タイトルが『学問のすゝめ』なのです。
■子どもを育てるとき注意をしたい「マタイ効果」
ここでいう学問とは、もちろん知識といった勉強もありますが、それだけではありません。生活に必要な「実学」を身につけることも含まれています。
「富める者はますます富み、奪われる者はますます奪われる」という現象を、「マタイ効果」と呼びます。実際、日本でも貧富の差はどんどん顕著になっています。しかし私は、子どもに関しては、裕福で甘い家庭で育った子どもだからといってますます富むということはなく、気をつけなければかえって生活に必要な実学の部分を身につけにくいのではないか、と考えています。
極端な例にはなりますが、女優の三田佳子さんは生涯年収が47億円と言われているのに、彼女の次男は4度も逮捕されています。次男は、親から月に何十万の小遣いを与えられ、さらには家族カードで「幾らでも好きなものが買えてしまえる」状況にあったと報じられたこともありました。そんな彼が、今から自立して働きだし、自らの力で生活できるまでのお金、つまり実学を得るのは難しいでしょう。いとも簡単に欲しいものが手に入ってしまい、どんどん手放せる環境下にいると、「自分の力で何かを手に入れよう」という必死さ、強い意志なんて湧いてこなくなるものです。