「子供を両親に見てもらえるので、安心してパートに出られます。しかも夫の世話をしなくてもいい! ストレスもなくなりました」

 前向きになった川上さんは、パートから派遣社員へとステップアップ。都心の企業で働くようになるが、そうとは知らない夫は「早く帰ってこい」。だがそのたびに川上さんは「母の体調が悪くて。ちょっと待って」とじらし、生活費をもらう。元の生活に戻るつもりはない川上さん。とはいえ離婚はしない。夫から支払われる生活費は手放したくないから……。

 子供の夏休みの間、夫から「やり直さないか」と持ちかけられ、旅行を提案された。夫は旅行先から川上さんと子供を連れて自宅に戻るつもりだったが、川上さんが理由をつけて断った。

「夫が『これって詐欺じゃないか』と怒ったんですが、『今はできないの。ごめんなさい』と謝ると、夫も黙ってしまいました」

 別居から3年。夫から振り込まれる生活費は12万円に減った。だが、「もうちょっと、待ってね」と繰り返す。

 1992年の開設以来3万5千件を超える相談が寄せられる「離婚110番」の離婚カウンセラー・澁川良幸氏は、次のように語る。

「別居中の夫が妻に戻ってきてほしいのなら、ケチじゃなければ、お金を出します。しかも離婚するまでは夫婦が同レベルの生活を維持できるために、『婚姻費用』という生活費を請求する権利があるため、法律的にも妻が優位です。さらに裁判所が婚姻費用の算定表も作っていますから、離婚するより得な場合もありますね。特に資産が少ない夫なら、財産分与を期待できないから、離婚しないで生活費をもらう作戦のほうが有利でしょう」

 生活費をもらいながら決して離婚しない「前向きな別居」を選択する女は実にしたたかだ。

■「子供に会えない」 夫脅すわがまま妻

 子供と別れたくない夫の弱みを握る妻は、その優位性を盾にする。

 教育関係の仕事に就く立川優子さん(仮名・38歳)は、「それなら離婚する」が口癖になった。

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