さて、原発性硬化性胆管炎(PSC)という胆管の病気がもともとある患者では、アルコール摂取が胆管がんのリスクを上昇させるのではないか、という研究がある。

 これは26人のPSCかつ胆管がんの患者と、87人のPSCかつ胆管がんのない患者を比較し、両者の違いがアルコール摂取の有無だったという研究だった(Chalasani N et al. Hepatology 2000;31:7-11)。アルコール摂取を現在している、もしくは過去にしていた患者と、アルコール摂取がまったくない患者を比べた場合、前者は後者より約3倍、胆管がんになりやすかったという。

 リスクを吟味するときはこういう「比較」が大切だ。単にアルコール摂取があった→がんになった、ではアルコールががんのリスクとは決めつけられないし、川島さんがワインを愛好していたから、胆管がんになったとの決めつけにもならない。これを「前後関係」と「因果関係」の取り違えという。

■「偶然」を一般化してすべての人に適用できるのか

 しかし、前後関係と因果関係の違いを区別するのはそれほど簡単ではないだろう。そこで「比較」が大事になる。リスクの有無と、病気の有無を比較して両者の関係を検討するのだ。では、Chalasaniらの研究を根拠に、アルコール摂取が胆管がんの原因といえるのであろうか。

 実は、この研究でもってワインが原因で胆管がんになる、と決めつけることはできない。「まぐれ」の可能性があるからだ。26人の胆管がん患者は、「たまたま偶然」アルコール摂取が多かっただけなのかもしれない。これを一般化してすべての人に適用できるのであろう。

「まぐれ」以外にも、「まぎらわしい」問題も起こる。全員ではないが、酒を飲む人には愛煙家が多い印象がある。本当は、喫煙ががんの原因であり、アルコールは無関係なのかもしれない。こういう「まぎらわしい」因子を「交絡因子」という。こういう「交絡因子」の問題を払拭するためには特別なテクニックを必要とする。

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「どのくらい飲むか」か重要