若者が声を潜めた。

「よくUFOが飛来します」
「はぁ、UFOが。聖徳太子は宇宙人だったとか、そういう話ですかねぇ」

 教え子の表情が変わった。

「そういうレベルでUFOを語らないでほしいですね。UFOというのは……」

 狂乱の宴は深夜まで続いた。翌朝、荷物を持って受付に行くと、何事もなかったように老人が座っていた。

「では、気をつけて……」

 支払いを済ませて車のキーを回した。すると、いきなりクラクションが鳴り出して止まらなくなってしまった。クラクションはいつまでも谷間に木霊し続けた。

 大センセイ、何者かに見られているような気がして、ゾクッと鳥肌が立った。

週刊朝日  2018年7月27日号

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山田清機

山田清機

山田清機(やまだ・せいき)/ノンフィクション作家。1963年生まれ。早稲田大学卒業。鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に『東京タクシードライバー』(第13回新潮ドキュメント賞候補)、『東京湾岸畸人伝』。SNSでは「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれている

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