著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回はバイオリニスト・古澤巌さんの「ブラッセリー クール」の「千葉県産仔豚のバロティーヌ グリーンペッパーソース」だ。
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この店はご近所で、ある日、ふらっと入って以来のおつきあい。とくに決まった定番メニューがない。そこが逆に魅力なんです。黒板メニューが毎回変わって、春はアスパラ、夏はウニ、冬はジビエといったふうに、その時期いちばんおすすめの旬の素材を食べさせてくれます。
そして、仔豚が生まれる春から夏に出されるのがこちら。ミルキーな味の皮付き仔豚に、鶏レバーなどを詰めて巻いたものですが、肉のバランスだったり、ソースの香りだったりに、作り手の創意工夫が見えます。
カウンターに座ると、いつもシェフが目の前のキッチンでひとり食材に向き合いながら、黙々と料理を作ってくれる。フレンチなのに、どこか日本料理の板前さんみたいな職人気質なところがあって。クラシックコンサートにアーティストの演奏を聴きに行くのと似たような感覚なんですよね。ちょっとキザないい方だけど、彼の生き様を味わいに行くっていうのかなあ……そんな魅力につられて、また足が向いてしまいます。
(取材・文/今中るみこ)
「ブラッセリー クール」東京都渋谷区円山町10-14 スタジオDEN渋谷1F/営業時間:12:00~22:00(水のみ15:00~17:00休)/定休日:火曜
週刊朝日 2018年6月22日号