なお、大学病院などは手術室数が限られていて、他院でおこなっていることもある。

 慶友整形外科病院の河野仁医師は、こう語る。

「手術は、とにかく数をおこなうことです。同じ病気であっても患者さんによって状態は異なりますから、医師の引き出しが多ければ、いろいろなケースに対応できるのです。それぞれの医師の経験値も重要です」

■病気のタイプや適切な時期を見極める

 手術を受ける目的で病院を選ぶには、病気の進行度や手術を受けるべき適切なタイミングについて、納得できる説明をしてくれる病院を選ぶべきだろう。二人の医師は次のように話す。

「脊髄(せきずい)症は、神経の幹である脊髄が圧迫されているので、手術を受けないと進行する可能性が高いと考えられます。箸が持ちにくい、字を書きにくい、歩きにくいなどの障害があれば手術を勧めています。神経根症は、痛みがつらければ手術を勧めています。必ず進行するわけではないので、患者さんの症状の程度や希望によります。腰の病気で馬尾(ばび)型(馬尾神経が圧迫されている)は改善しにくいため、症状によって手術すべきだと思います」(河野医師)

「3週間~3カ月の保存療法をしても痛みがとれない場合や、運動麻痺(まひ)、排尿障害、筋力低下などが出はじめた場合は、手術をしたほうがいいでしょう。また、本人が何に困っていて、何の改善を優先するかも重要です。例えば姿勢の改善など、AOL(生活の快適性)の向上を患者さんが望む場合もあります。そうした希望に応じて手術が適切か、医師との話し合いで決めましょう」(田口医師)

 いざ手術を受けることになったら、術式を確認することも重要だ。

「首や腰の手術は、アプローチの方法や道具にはいろいろありますが、大きく分けると2種類しかありません。神経が圧迫されているその圧迫を取り除く手術と、取り除いたうえで固定する手術です」(同)

【取材協力】
◯山口大学病院整形外科科長・教授
田口敏彦(たぐちとしひこ)医師

◯慶友整形外科病院整形外科部長・慶友脊椎センター長
河野仁(こうのひとし)医師

【表の見方】
日本脊髄外科学会の認定医がいる333 病院に脳神経外科向けの調査用紙、日本脊椎脊髄病学会の指導医がいる874 病院に整形外科向けの調査用紙を配付し、2016 年1 年間の頸椎、腰椎の手術数を聞いた。頸椎の内訳として、頸椎症による脊髄症、後縦靱帯骨化症、頸椎椎間板ヘルニアによる脊髄症、神経根症、腰椎の内訳として、腰部脊柱管狭窄症(すべり症含む)、成人脊柱変形の手術数を記し、その合計の手術数で並べた。脳 = 脳神経外科のデータ、 整 = 整形外科のデータを示す。

(文・小久保よしの)