「離婚そのものが珍しくない今、夫が離婚しても出世に響かなくなっていることも、離婚を考えやすくする要因の一つでしょう」(中里弁護士)
離婚したいと思っていても、現実にはいくつものハードルがある。いいことばかりではない。加藤さんのケースを読んで「自分も……」と思った読者は、まず、男性側のデメリットをしっかり認識しておこう。それは、ずばりお金だ。
「離婚で最ももめるのは、お金の問題。離婚すれば、生活水準やライフプランが大きく変わることを自覚した上で行動しなくてはなりません」(同)
一般的に、離婚の際の金銭的な取り決め事項は、大きく分けて、(1)財産分与(2)年金分割(3)慰謝料(4)養育費(子どもがいる場合)の四つ。熟年離婚の場合、最も大きな問題が財産分与だ。夫婦それぞれが結婚前に貯めた分などを除き、原則として、お互いの財産を全て開示し合い、婚姻期間中に築いた財産全てを折半する。預貯金などのほか、2人による借金や住宅ローンなども夫婦による財産として分けることになる。
夫の退職金は、婚姻期間分を折半する。例えば、入社8年後に30歳で結婚、60歳で退職金が2千万円出て離婚するケースなら、勤続38年のうち、8年分は夫のもの。取り分は夫が76分の46、妻が76分の30。金額にして、夫が約1210万円、妻が約790万円となる。