「羽生選手の場合、白と青のグラデーションの色合いを用いたいというオーダーが多い。写真は肖像権の関係で使えないため、イラストや文字のインパクト、目立つような生地感やキラメキなどのディテールも工夫します」(佐竹さん)

 大会によっては、会場入り口に「選手へのプレゼント預かりコーナー」があり、選手宛てとして渡せることもある。ただし、食品、鉢植えも含む動植物、貴金属・宝石などの貴重品、金券、商品券などは受け付けていない。

「選手によっては、届いたファンレターに対し、自筆で返信を書く人もいます」(前出の山本さん)

 実は羽生も長年、自筆でファンレターの返事を書いている選手の一人。実際に、ファン歴4年という女性(61)は昨年9月、羽生からミニクリアファイルと共に自筆返信が届いたという。それまでに出したファンレターは20通超。「完全にハートをわしづかみにされた」という手紙の文面には、こうつづられていた。

「今シーズンもたくさんお力をいただきました。本当にありがとうございました。五輪に向け日々の練習を大切にし、限界を高め続けます!! 応援よろしくお願いします!」

 氷上は選手とつながることもできる場所。現地観戦でしか味わえない感動と興奮は、確かに存在する。来季は、“筋書きのないドラマ”の一員として、リンクに足を運んで観戦してみませんか?(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2018年3月16日号

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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