とした上で、個性を主張しすぎない洗剤や柔軟剤の香りは、没個性の日本人にも違和感なく受け入れられ、急速に普及していったのではないかと分析する。
その一方で、最近では香りの行き過ぎが問題にも。例えば、無添加石けんを製造販売するシャボン玉石けんが、17年8月に香りに関する意識調査(対象者は20~60代の男女約600人)の結果を発表。回答者の約半数が「人工的な香りをかいで、頭痛・めまい・吐き気などの体調不良を起こした」、約8割が「他人のニオイ(香水や柔軟剤、シャンプーなど)で不快に感じた」と回答した。
「あくまでも“他人のにおい”という前提になりますが、不快に感じる、体調不良を起こす人が非常に多いと感じました。人工的な香りは本当に必要なのか、一度、考えてみる必要があるでしょう」(同社マーケティング部・富村達也さん)
こうした香害の背景の一つに、必要以上に強いにおいを放つ人たちの存在がある。自分では適度と思った香りが周囲には迷惑になるケースだ。とくに同じ香りばかり使っている人は要注意。そのにおいに慣れ、感じなくなるからだ。環境生命医学が専門の東海大学医学部長の坂部貢さんが説明する。
「同じ刺激をずっと受けていると、その物質に対する感受性が低下してきます。これは一種の“ダウンレギュレーション”といえ、その結果、より強い刺激、より強いにおいを求めるようになってしまうのです」
坂部さんによると、哺乳類をはじめ多くの生物は、種の違いをにおいの違いで察知している。だが、このダウンレギュレーションゆえに強い香りをつけるようになり、他人を不快にする香害が生じてしまうのだ。
では、こうした香害を予防するにはどうしたらいいか。前出の坂井さんはこうアドバイスする。
「“いくつかの香りを使い分ける”“柔軟剤などであれば、自身の感覚に頼らずに使用量を守る”といったことが大切です」
実際、柔軟剤などでは使用量が増えるほど、周囲が感じる香りも強くなることが実証されている。香り成分がより多く衣類に残留するためだ。日本石鹸洗剤工業会も、ウェブサイトで使用量の目安を守ることを通知している。