いつか必要になるかもしれない介護への備えは十分?(※写真はイメージ)(c)朝日新聞社
いつか必要になるかもしれない介護への備えは十分?(※写真はイメージ)(c)朝日新聞社
正社員だった人の介護転職後の働き方と年収の変化(週刊朝日 2018年2月2日号より)
正社員だった人の介護転職後の働き方と年収の変化(週刊朝日 2018年2月2日号より)
50~60代に介護離職者が急増する(週刊朝日 2018年2月2日号より)
50~60代に介護離職者が急増する(週刊朝日 2018年2月2日号より)

 親の介護のために退職を考える人も少なくないはず。しかし、介護離職を危惧するのは、介護の取材が長く、共著『介護破産』などがある村田くみ氏だ。

【図表でみる】正社員だった人の介護転職後の働き方と年収の変化

「会社を辞めなければよかった……」

 80代の両親の介護のため、5年前に離職した独身女性(55)は、後悔の念が募る。要支援1で、つきっきりの介護は必要なかったが、衰えが目立っていたから退職に踏み切った。

「冷静になって考えれば、親を看取った後、自分の老後も考えなければならない。あせって会社を辞めなくてもよかった、と後悔しました。会社と交渉して残業をなくしてもらってでも、正社員でいればよかった」

 女性は団体職員として15年以上働いていた。残業が多く、連日終電。深夜に帰宅後、家の手伝いをして就寝し、翌朝9時には出社。4時間睡眠の生活に疲れ果てていたという。今は知人のつてでNPO職員として働くが、給料は退職前の半分程度。退職金もない。

「介護離職防止対策促進機構」の和氣美枝・代表理事(46)は、不動産会社の正社員だったが、認知症の母(77)の介護で約8年前に退職した。介護の知識がなく、情報をどう集めればよいかもわからない。生活のすべてが次第に中途半端になり、精神的に不安定になった。

「介護者の不幸は、選択肢が見えなくなることなんです。介護が始まると『辞めるしかない』と思い込んでしまうのです」という。

 明治安田生活福祉研究所とダイヤ高齢社会研究財団の調査「仕事と介護の両立と介護離職」によると、離職者の5割強は、介護が始まってから1年以内に辞めている。正社員だった人の介護離職後の年収は、男性が約557万円から約342万円と4割減。女性も、約350万円から約175万円と半減した。

 男性が特に気をつけたいのは、定年退職前、管理職などのポストから外れる「役職定年」にさしかかった時期。給料が新卒並みに激減するため、このタイミングで親の介護に直面すると、離職へと一気に傾きやすい。

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