
名門私立男子校が揺れている。今年、開成、麻布と並んで「御三家」と言われている武蔵中学の志願者が500人を切り、過去6年間で最低を記録した。
背景には昨年の東京大学合格者数がある。開成203人(現役139人)▽麻布90人(51人)▽駒場東邦69 人(51人)と比較して、武蔵は20人(9人)。1学年の生徒数が開成の半分以下(開成が400人、武蔵が176人)なので単純比較はできないが、2003年は合格者が49人だったので、ここ10年で半減したことになる。
この状況に武蔵の梶取弘昌校長(60)は危機感を募らせる。昨年、東大に不合格だった生徒の「お役に立てなくてすいません」という言葉がショックだった。
「生徒を後押しするのが学校の役目なのに、あんなことを言わせてはいけない」
中学受験の志願者が減ったことについて、
「『武蔵は面倒見が悪い』と誤解されているところがあります。少人数教育ですから、生徒一人ひとりにかける時間は多い。ただ保護者が面倒を見てほしいと思うところと、我々が大切に考えているところが違うのかもしれないという気はしています。一例として東大合格者が減ったことです。今まで武蔵は受験のためだけの指導はしてきませんでした。勉強についても自分で考えなさい、というスタイルでした。でも今の子どもは塾や家庭で手取り足取り教えられてきている。そこに対応してこなかった反省はあります。今まで進学については生徒の自主性に任せていましたが、情報を今まで以上に発信していくことにしました」
さまざまな学部に進んでいる卒業生を招いて現役時代の勉強法などのガイダンスを行い、学外の模試の案内もするようになった。梶取氏は続ける。
「東大進学者数が教育の最重要目標であるような風潮は大変残念です。とはいえ受験実績も重要です。私が東大に毎年50人送るぞと言えばそうした体制を作れるのですが、それでは普通の進学校になってしまう。それが目指す姿ではないことは生徒も教員も一致しています。武蔵の教育を変えずに実績をどう上げるか、ジレンマの中にいます」
※AERA 2013年4月8日号