西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、日本野球界で変化を遂げた打順の考え方について解説する。
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ひと昔前、野球で言えば「9人野球」「レギュラー固定」こそ、安定した戦いを生むには重要で、常勝軍団を築くには、いかに質の高い9人をそろえるかという点に主眼が置かれていた。
レギュラーは少々の故障があっても出続ける。疲れで明らかにスイングが鈍っていても、極度の不振に陥っても、使い続けることこそ、監督と選手の信頼の証しでもあった。
だからこそ、「猫の目打線」というものは当時は邪道に映った。私が西武監督時代には、オリックスの仰木彬監督がイチローを1番や3番、時には4番に配し、毎試合のように、猫の目のようにクルクルと打順を変えていた。それを「仰木マジック」とも称された。「マジック」は幻惑。本道ではなかった。
だが、今は違う。DeNAの筒香だって、3番に入ったり、4番に入ったりする。ましてやレギュラー9人は固定なんかできない。ベンチ入り25人をどう使い切り、力を最大化するか。そして故障者が出れば、2軍の選手の誰を上げるか。今の監督たちは、ファームから1軍へ上げた選手をすぐにスタメンで使う。勢いのあるうち、調子の良いうちに起用して力を発揮させるのだが、今は「猫の目」起用こそ、監督の腕の見せどころとなった。
長い野球の歴史の中で「1番=足が速い」「2番=小技がうまい」「クリーンアップ=大砲」などの概念が確立されてきた。だが、すべてを崩す時なのかもしれない。近年になって「2番に強打者を置く」という考えも出てきたが、本来は「その日に出す9人でどう得点力を生み出すか」が必要なこと。圧倒的な存在感を示す選手がいれば、そこを軸に組み立てるが、決して「4番が軸」ではないのだから、場合によって「3番」などを任せることがあっていい。