興味深い研究がある。11月29日に東京・水道橋で、健康と住宅の関係性をヒントに長寿社会を考えるシンポジウムが開かれた。「暖かい住まいが健康長寿を延ばす」と題して登壇した慶応義塾大の伊香賀俊治教授(工学)は次のように指摘した。
「英国では家の寒さによって心筋梗塞(こうそく)や脳卒中、血圧上昇などのリスクが高まるとの研究から、寝室の温度を暖かく保とうというキャンペーンがあります」
日本も例外ではなく、特に温暖な県で冬の死亡増加率が上昇しているという。「それに対して、断熱住宅が普及している地域では、冬季の死亡増加率は低いのです。これは、断熱改修によって暖かい居室に暮らすことで疾病予防に寄与する可能性を示唆しています」
伊香賀教授によれば、リビング、寝室、浴室などの温度差を減らすことで、病気のリスクを軽減できるという研究結果が出ている。
浴槽から脱衣所など室内を移動するときの急激な温度差が引き金となり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすのが「ヒートショック」だ。
「寒いと動きが鈍くなり、高齢者の転倒事故も起こりやすくなります。住宅内の健康的な室温は18度から21度を保てると理想です」(伊香賀教授)