安野光雅(あんの・みつまさ)/1926年、島根県津和野生まれ。88年紫綬褒章、2012年文化功労者など受賞多数。津和野に「安野光雅美術館」がある。今年6月、新たに京丹後に「森の中の家 安野光雅館」が開館。(撮影/写真部・小林修)
安野光雅(あんの・みつまさ)/1926年、島根県津和野生まれ。88年紫綬褒章、2012年文化功労者など受賞多数。津和野に「安野光雅美術館」がある。今年6月、新たに京丹後に「森の中の家 安野光雅館」が開館。(撮影/写真部・小林修)

 90歳を迎えた画家が手掛けたのは、名作「大きな森の小さな家」シリーズ。かつてNHKで放送されていたアメリカのテレビドラマ「大草原の小さな家」の原作でもあるローラ・インガルス・ワイルダーの小説をもとにした作品だ。その130点を超える原画が、新たにオープンする美術館「森の中の家 安野光雅館」で初公開されるのに先駆け、原作との出会いや思いを明かしてくれた。

 安野光雅さんが、90歳を超えて手掛けた最新作「大きな森の小さな家」シリーズの原画が、まもなく初公開されるという。これは主に、今春刊行されて人気を博している『小さな家のローラ』のために描かれたもの。ローラ・インガルス・ワイルダーの小説をもとに、安野さんが130点を超える絵を描き、監訳した贅沢な作品だ。

「1970年代に、シドニーからの帰りに空港の売店で“On the Banks of Plum Creek”(邦題『プラム・クリークの土手で』、シリーズ第3作)をたまたま手に取ってね。飛行機の中で、わかる英単語を拾いながら読んだんだけれど、とても面白かった。特に、雨が降る音を、屋根に小人がいるのかしらってローラが思う場面は、強く印象に残っていてね。1冊目にあたるこの本に、場違いなんだけれど、入れてしまった」

 そんな40年余りの思いが詰まった原画が展示されるのは、故郷・津和野に続き、今月23日にオープンする個人美術館、京丹後<和久傳の森>「森の中の家 安野光雅館」。設計を手掛けたのは、建築家・安藤忠雄氏だ。「外は屋久杉の板張りで、中からも自然が感じられて、すごくいいんですよ」と安野さん。まさに“大きな森の小さな家”を体現した場所で、そこに息づく命を感じながら絵の世界に浸れる、贅沢な機会となりそうだ。

●「森の中の家 安野光雅館」住所:京都府京丹後市久美浜町谷764 和久傳の森

週刊朝日  2017年6月30日号