「保育園落ちた日本死ね!!!」
昨年2月、ある母親のブログの書き込みが話題を呼び、待機児童問題が国会も巻き込む大論争となった。
保育所数は10年の約2万3千から16年には約3万1千と増えている。それでも、施設が増えると子を預けたい保護者も増え、待機児童数は減らない。
保育所を増やす方策として、00年代以降に新規参入への規制緩和が進んだ。保育所は増えた一方で、質が十分保たれず、現場のブラック化を招いている面がある。全国福祉保育労働組合の小山道雄・副中央執行委員長はこう話す。
「規制緩和によって、保育を福祉事業でなく利益事業と考える企業が次々に参入しました。保育園は一般に、支出の約7割が人件費。しかし、一部の株式会社は5割を切る。国や自治体から補助金をもらっても人件費に充当せず、利益を捻出しているのです」
介護、出版、パチンコなど異業種から続々と新規参入した。もちろん、株式会社だからといって、必ずしも保育士に劣悪な環境を強いるわけではない。ただ、利益を求める圧力が高まりやすいのも実情だ。
都内で社会福祉法人の保育園を経営する男性は言う。
「全国チェーンの株式会社の保育所は、補助金と保護者からの利用料など年1億円の収入があると、1千万円ほどを運営会社に本部管理費として支出します。運営会社に入ったお金まで、監査する自治体の目は届きにくい。利用料金と税金が、ブラックボックスの中に消えていくのです」
資金を運営会社に還流する方法は、ほかにもある。
「英語の授業や給食事業などをグループ会社に丸投げして、さらに数千万円支出する。原価は外部からわかりません」(同)
前出の角川さんも、給食の受託企業の営業マンからこんな売り込みを受けた。
「昼の給食とおやつをセットで、1食100円で提供します。それを500円分の食事として園児に出してはどうでしょうか」
そんな安価な食事では、何が入っているかわからない。角川さんは、もちろん断ったという。