保育士の平均月収は約22万円。全職種平均より10万円以上安い(平成28年賃金構造基本統計調査)。園児の命を預かる仕事なのに低水準で、16年の参院選で与野党の争点にもなった。給与は近年上がる傾向だが、それでも15年から約4千円アップにとどまる。

 保育士に十分な賃金を払えるように、国や地方自治体は運営費の約7割を人件費に充てることを想定し、補助金を支出している。しかし、対応は施設によってまちまち。待遇改善が進まぬ一因になっている。

 保育士の使命感につけ込む経営者もいる。

「ほとんどの保育士は、子どもを育てることにやりがいを感じています。サービス残業や休日出勤など劣悪な環境で働いていても、『子どもを置いて保育園を辞めるのか』と言われると、我慢して働き続ける。パワハラやセクハラに悩みながら働く人も多い。そんな性格を利用する経営者もいる」(前出の経営者男性)

 保育園への保護者の要望は、年々増えている。

「アレルギー対応の食事、夜間や休日の保育だけではなく、おむつ教育やしつけも保育園に求められます。近所づきあいが少ない都市部では、親が地域から孤立している。子育てをアドバイスする人が近所におらず、保育園の親同士のネットワークが頼り。保育園問題は、社会の“ゆがみ”を映す鏡なんです」(前出の元経営者)

 前出の小林氏は「新規参入が増えたのは、自治体としてはコストが抑えられてありがたい。ただ、保育所というハードは増えた一方で、質を支える人材育成が進んでいません」と指摘する。

週刊朝日  2017年6月2日号