病院で処方される薬には、唾液の分泌をうながす「コリン作動薬」や、口の中を保湿するための人工唾液などがある。ただし、どちらも現在では、シェーグレン症候群や、がん治療の副作用による症状などに限って処方されている。カンジダ菌に感染することで痛みを感じる場合には、抗真菌薬が処方される。

 市販薬には、口の中を保湿するためのマウスウォッシュやスプレー、ジェルなどがある。いずれも保湿成分が含まれており、マウスウォッシュは水だけでうがいをするより口の中の潤いが長く続く。スプレーは、外出時などの携帯に便利だ。ジェルは、口の中にぬるものだが、ぬることで保湿できると同時に、ジェルで粘膜をカバーすることで、水分の蒸発を防ぐ効果も期待できる。さらに、口腔内に指でぬることで唾液腺が刺激され、唾液の分泌をうながすことにもつながる。

 いびきや歯ぎしりなどが原因の場合には、夜間だけマウスピースを装着することで渇きが改善されることもあるという。

 唾液の分泌を促すためには「水分をとること、よくかむことなど生活改善も大切」と山田歯科医師は話す。

 高齢になるとのどの渇きを感じにくくなり、水分をとらない人も多いため、こまめに水分をとる習慣をつけることが大事だという。また、かむことをしないと唾液の分泌量が低下するため、適度に歯ごたえのあるものをよくかんで食べることも大切だ。

「江戸時代には、日本人は1回の食事で約3千回かんでいたのが、現在では600回程度に減っているといわれています。とくに高齢の方は、食事量が減ったり、やわらかいものばかり食べたりと、かまなくなってしまうことが多いため、当院では『ごはんは白米より五穀米にして、肉はひき肉より薄切り肉を。そして、根菜の煮物やきんぴらなどをよくかんで食べましょう』とお伝えしています。水分を十分にとり、よくかむ食事を続けることで、ドライマウスが改善される人もいます」(山田歯科医師)

週刊朝日 2017年5月26日号