そうならないためには、増悪を起こしたらできるだけ早く医療機関を受診することが大切で、症状が起こってから48時間以内に治療を受けることが望ましいとされている。日本医科大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞医師はこう話す。
「以前は“急性増悪”と呼ばれていたように、“増悪”というと急激に症状が悪化するものだと考えられてきました。しかし最近は症状が悪化したまま、時には数週間以上続くタイプの“増悪”が多いことがわかっています。このような場合、“治りにくい風邪”と判断して治療が遅れ、COPDそのものを悪化させてしまうことがよくあるのです」
入院の必要がないような増悪の場合でも、安定期の薬物治療とは異なる。まず気管支拡張薬の吸入を増量・追加し、ステロイド薬を使用する。感染症が疑われる場合は「抗菌薬」も追加する。増悪と適切に診断されないままこれまでと同様の薬を使用しても症状が改善しないだけでなく、肺機能が低下し、日常生活が不自由になることもある。
増悪時の主な症状は「息切れがいつもより強い」「痰の量が増えて切れにくい」「痰が黄色くなる」「熱やのどの痛みがある」「食欲が落ちる」などだ。これらの症状があれば自己判断せずに受診したい。
「COPDの患者さんの場合、風邪のような症状でも、それが増悪の可能性があります。当院ではこのことを知ってもらうための患者さんへの指導を徹底しています。これによりCOPDの増悪で緊急入院が必要となる場合はほとんどなくなりました」(木田医師)
COPDの治療では、増悪の予防、早期治療はきわめて重要である。増悪の原因の多くは風邪などの感染症のため、手軽に受診できるかかりつけ医による早期治療、インフルエンザワクチンを接種するなど感染症を予防することが大切だ。
※週刊朝日 2017年4月14日号